印度維新

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イギリス:合意なき離脱の場合は、直後にEU市民の自由な渡英を停止か

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ジョンソン政権が労働ビザの付与の方法を年内にも変更する見通しであることは、以前にも書いたが、10月31日に迫るブレグジット後のEU市民の処遇も当初予想されていた内容とは異なる可能性が出てきた。ボリス・ジョンソンは首相就任後の初のスピーチで、EU市民のイギリス社会への貢献に感謝し、「彼らの権利は保証する」と宣言した。しかし、国内メディアによると、パテル内相は「合意なき離脱」の場合は、直後にEU市民の自由な渡英を停止する方向で押しているということだ。実現すれば、政府にとって大きな政策転換となる。

 

今のところ、EU市民は、イギリスの「合意なき離脱」後も3ヶ月以上の在留許可の登録申請さえすれば、2021年1月までの移行期間はイギリスに自由に入国でき、就労も可能という認識のはずだ。現在、イギリスに居住する大半のEU市民はイギリス永住権を持っていない。もしジョンソン政権が年内に導入するとしているオーストラリア型のポイント制度がEU市民にも適用されるとなると、彼らの就労に関わってくる。ある民間シンクタンクの分析によると、イギリス国内のEU市民の約75%が労働ビザを取得できない見通しだという。特に、一部のサービス業(接客、運送、小売など)に従事する労働者のポイントが不足すると見られている。ホテル、レストラン、運送、倉庫、卸売、小売セクターでは、就労者の実に9割以上が労働ビザを取得するためのポイントに到達できない見通しだということだ。その他セクターでは、金融サービスで25%、インフォメーション・コミュニケーションで3割程度がやはりポイント不足となると予想されている。低賃金、低技術労働者にとってはかなり厳しい状況になりそうだ。また、零細企業の95%が非EU市民を雇用した経験がなく、新制度に対応するための企業負担も懸念されている。

 

パテル内相は保守党の中の極右と評される人物だ。移民政策に関しても断固たる方針を持っている。低所得・低技術労働者を高所得・高技術労働者(いわゆる高度人材)にごっそり取り替えようということか。そうは言ってもねぇ、1年程度の猶予はやはり付与するのが人の道ではないかと思うのですが。。。それに、私自身30年近くイギリスに暮らし、旧東欧諸国からの貧しい移民たちが勤勉に働き、起業し、成功していく例はいくらでも見てきた。アメリカンドリームならぬブリティッシュドリームの体現者たちだ。低所得・低技術のEU市民の中にもきっとブリティッシュドリームを求めて入国した人々がいるに違いない。彼らのチャンスを冷酷にもぎ取ることが果たしてイギリスの国益になるのだろうか。

 

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