印度維新

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インドの医療現場に変革の兆し

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 インドは医薬品ではすでに貿易黒字国であり、その市場規模は2023年には320億ドル相当になると見込まれているが、国内メディアによると、政府は”Make in India”プロジェクトに医療機器メーカーを誘致すべく動き始めているということだ。輸入から脱却し、コストを下げるためだ。政府の政策シンクタンク、Niti Aayogはその政策内容をまもなく発表する予定だということだ。インドを医療機器の製造ハブとし、いずれは国内外の市場に供給することを目的としている。まずは癌や心臓病のスクリーニング機器から始め、いずれはペースメーカー、人工呼吸器、人工透析機器、CTスキャナーなどに範囲を拡大するということだ。検討されている助成金はエレクトロニクス企業同様、設備投資額の25%だということだ。Niti Aayogは今週半ば、保健省など関係省庁と会合を持った。

 

インドの医療機器市場の規模は現在100億ドル超、アジアでは日本、中国、韓国に次ぐ4番目の大きさだ。2025年までには500億ドル相当に達すると見込まれている。インド政府はすでに医療機器分野に関しては100%のFDI(外国人直接投資)を認めており、政府の許可申請も必要としない。しかし、以前にも書いたが、Advamed(米国先進医療技術工業会)がインド政府による医療機器の価格抑制に反発しているように、価格面では外国資本と折り合いをつけていかなければならない。また、政府側にも課題は残っている。医療機器の製造、販売、輸出に関してはその安全性が担保されるよう規制しなければならないが、インプラント機器が今年2月にその対象となったばかりで、規制対象外の医療機器はまだまだ多く残っている。

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 一方で、Ayushman Bharat(国民健康保険)を推し進めるモディ政権は、今後6ヶ月の間に、国立医療委員会(NMC:National Medical Commission)を設立する。インドの医学教育の透明性、アカウンタビリティー(倫理、説明責任)、ガバナンスを向上させることを目的とし、医学部の新設と手続きの簡素化、医学生のコスト負担軽減と医師数の増強、および質の高い医療やヘルスケアをより多くの国民に届けることがそのミッションだ。モディ首相は「インドが次なる段階へと成長するためには健康な国民が不可欠であり、貧困層を不健康が継続する状況から解放することは極めて重要」としている。

 

私が住むイギリスでも(日本ほどではないが)医者不足が深刻だ。その不足分のかなりの部分をインド出身の医者に補ってもらっているのが現状だ。インド経済の更なる発展とともに渡英する医者の数が減ることは大いに予想される。せいぜい摂生して健康に気をつけるくらいしか対処法はない。

 

 

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