印度維新

インドの政治・経済・時事を語る井戸端ブログ

トランプ米政権がインドをGSP対象から外した裏にAdvamed(米国先進医療技術工業会)か

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先週金曜、トランプ大統領はインドをGSP(The Generalised System of Preferences: 一般特恵関税制度)の対象から除外することを布告、本日6月5日より適用された。「インドはもはや開発途上国ではない」 しかも、「いくつかの産業分野においては、米企業の市場アクセスが公正かつ合理的でない」とのこと。本日6月5日をもって、インドは1971年11月より恩恵を受けていたGSPから除外された。

 

インド政府の反応は「そりゃ残念だ」とクールなもの。実際、インド商工省も「毎年の免税分は190百万ドル程度で、インパクトは極小」としている。一部メディアによると、インド政府の声明は当初「今後も両国が相互に有益となるような関係を構築するため、密接に協働していくことを希望する("it is hoped")」だったのが、下線の部分が「確信している("we are confident")」と訂正されたそうだ。アメリカと喧嘩する気は毛頭なさそうである。中国のような経済大国ではまだない。喧嘩する必要もない(それくらいは他国への輸出増で補えそうだし) ことトランプに対しては「負けるが勝ち」、顔を立てて実利をとる方針か。

 

トランプの布告とほぼ時を同じくして声明を発表したのが、世界最大の医療機器業界団体、Advamed(米国先進医療技術工業会)だ。「両国がインドにおける医療機器の価格統制や、インド政府の入札方針で合意できなかったことは残念だ」というもの。彼らは昨年より「インドは公正かつ合理的な市場アクセスを供給できていない」として、米政府にインドをGSP対象から外すよう働きかけていたロビーグループの一つだ。構成企業にはMedtronics, Johnson & Johnson, Abbottなどが含まれる。冠動脈ステントや膝インプラントに対するインド政府の価格統制が二国間の貿易摩擦の引き金になったとか。Advamedは「両国間でいずれ合意に達するであろう」と楽観的だ。

 

さぁ〜て、それはどうかしら? 貧民の味方、モディが許す訳ないと思うよ。実際、先進医療技術の価格上昇で困るのは貧困層ってより、中間層だし。大票田の期待裏切れないでしょ。製造業の振興策としてモディ政権が掲げる「Make in India (メイク・イン・インディア)」に乗ってくれるならまだしも、乗ってもくれないなら、昔の植民地支配者と同じでしょうよ、あんた達、ってね。ただ、トランプが機嫌を損ねて、GSP対象から外すだけに留まらず、関税引け上げに動くのは困る。しかし、モディにはアメリカに対応できるカードがいくつも残っている。その一つがインドの軍事力強化だ。

 

昨年8月、印米間では外務・防衛閣僚が一堂に会する2+2協議が行われ、多くの合意がなされた。その後、日印(次官級2+2)、日米印(首脳会談)と続き、昨日の河野ジャイシャンカル電話会談では日印の閣僚級2+2の早期実現も確認された。日米との安全保障連携を強めようとするインドの意欲は明らかだ。アメリカは先月、インド海軍にMH–60ロメオ(シーホーク統合多用途艦載ヘリコプター)24機を売却することを承認している。「アメリカの外交政策、安全保障政策に合致するもの、米印の戦略的連携を支持するもの」と。インドのアメリカからの武器装備購入は今後も続くであろう。連携する日米と同じ装備を持っているのに越したことはないからだ。それでトランプの顔を立てられるなら、持って来いってね。

 

 

 

 

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