印度維新

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インド政府、10月にJ&K投資家サミット開催か

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結局、カーン首相のアメリカ参りも虚しく、トランプ大統領の仲裁はなかった。アメリカ政府は、今回の第370条項、35A条項の撤廃に関して、インド政府からは事前の相談も報告もなかったとしている。ジャイシャンカル外相がポンペオ国務長官に先週、バンコクで事前に報告したとの米印メディアの憶測記事を否定したものだ(パキスタンの手前、公に認めることはないに違いないが)。トランプ大統領の対応は感心するほど巧みだ。今後もカーン首相はトランプ大統領が望む「(特別部隊を除く)アフガニスタン撤退」を人質に(タリバンとの交渉にはパキスタンの手助けが必要とする考え方)、アメリカの介入を催促するであろう。国境付近で印パの小競り合いが発生すれば、トランプ詣でも続けるであろう。トランプは拒絶することなく、カーン首相に夢を見続けさせながら、いいとこ社交辞令「偉大なる両国が平和へと歩み寄ることを願う云々」で終わるのではないだろうか(あ、デジャブの感覚。日本近隣でも似たようなことがあったような)。

 

アメリカのアフガニスタン撤退後、彼の地がタリバン政権となり、パキスタンによるテロリスト養成地となるという、インドが恐れるシナリオは、アメリカにも共有されていよう。アフガニスタン撤退にはパキスタンの協力が必要だが、撤退後はアメリカにとっても懸念がなくなる訳ではない。インドにとっては大いなる脅威として立ちはだかる。その事態に備えるためには国境地域を連邦政府直轄とする他なかったのではないだろうか。米印の間で実際にそのようなシナリオが話し合われたかどうかは定かではないが、今回の措置が結果的にトランプ大統領アフガニスタン撤退を早めることとならなければ良いが。いずれにしても、用意周到のモディ首相としては、希望的観測(アメリカのアフガニスタン撤退はない)に寄りかかる訳にはいかなかったのではないだろうか。

 

今回の第370条項と35A条項の廃止に関しては、予想通り、国際メディアはインド政府を批判する色彩が濃厚だったが、ラダック地方の人々からは、これまた予想通り、今回の措置を歓迎する報告が上がってきている。一部のインド国内メディアやSNSで拡散されている。実際、ジャンムー・カシミール地方の領土の6割を占めるラダックは地政学上も重要な位置にある。パキスタン占領下のカシミール、中国占領下のカシミール、中国占領下のチベットに通じているからだ。しかし、そのために至るところが軍や軍組織に占拠され、人々の暮し向きは貧しい。電力、交通、通信のインフラは乏しく、市場や産業の発展もなく、教育機関も不十分、雇用機会も限られていた。2条項の撤廃で、インド連邦政府直轄となったことで、彼らは、これからは変わっていくだろうという希望に満ちている。地形と気候は農業には適しておらず、学校や住宅の建築も難しい。地域から出たこともない若者が大半だ。インド政府に課せられた仕事は大きい。

 

国内メディアによると、モディ首相は10月にJ&K投資サミットを計画しているということだ。2条項の撤廃でこれまでは不可であった土地建物の取得や熟練労働者の雇用が可能となる。州外の専門職が州政府の職につけなかったために、教員も不足していた。サミットでは観光、教育、医薬品、ヘルスケア、農産物加工などの各界を代表する企業グループが集結し、具体的な投資プランを披露するということだ。地域への投資が入ってくれば、地元の観光、不動産、工芸品、園芸資材、食品加工などの産業が活気付き、雇用も増えるだろうとしている。シャー内相のスピーチによると、民間病院の建設も計画されそうだ。頑張れモディ政権!批判的だった国内外メディアに少しは謙虚になってもらいましょう。

 

 

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