印度維新

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インドとイギリス、二国間貿易のワーキング・グループ設置へ、AI共同開発への布石か

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昨日、インドとイギリスは、ロンドンで開催されたJETCO(Joint Economic and Trade Committee)において、二国間の貿易障壁を克服するため、三つのワーキング・グループを立ち上げることに合意した。食飲料品、ヘルスケア、データサービスの各セクターのワーキング・グループは、UKIBC(UK Indian Business Council)、CII(インド産業連盟:the Confederation of Indian Industry)、FICCI(インド商工会議所連盟:Federation of Indian Chambers of Commerce and Industry)によって運営される。

 

政府間だけでなく、ビジネス同士の交流を促進するJETCOの目的は非関税障壁の撤廃だが、これらワーキング・グループは各省庁への提言もするということだ。JETCOの元、2016年に両国が”The Joint Trade Review(共同貿易観測)”を発足させてから、二国間貿易は大きく伸びている。2000年初頭から10%未満の増加率だったのが、2018年には22%増となった。今回のJETCOでは、商務産業相のピユッシュ・ゴヤルとイギリスの国際貿易相のリアム・フォックスも会談した。また、事務方を担当したUKIBCは英印企業間の交流とパートナーシップを深めるためのフォーラムも提供するが、今回、ゴヤル商務産業相と既にインドに進出しているイギリスの主要企業の会見の場を設けたことは特に意義深いものだったとしている。次の10年あまりで世界の経済大国となるインド経済への共通認識、共に発展して行こうとするビジネス野心の確認だけでなく、二国間貿易の問題点の克服のために改革が必要だという認識も共有したからだということだ。実際、いくつかの改革案も提示されたと。

 

そのUKIBCは先々月、英印間のテクノロジー・パートナーシップの一環として、両国のデータ共有を推奨する報告書(‘Data: The foundation of intelligent economies. India’s data protection and the future of the UK-India Tech partnership’)を出している。そこで、データ共有協定(CDA:Common Data Agreement)の締結を呼びかけている。具体的に目指すところは、Niti Aayog(インド行政委員会)の国家データ戦略の中でも優先順位の高い、教育、農業、ヘルスケア、スマートシティ、インフラ、交通の分野での英印共同のAI開発だ。今回設置が合意されたデータサービスのワーキング・グループはCDAへの布石になると見ているようだ。また、同報告書の中で、特に焦点が当てられていたセクターにヘルスケアがある。昨年発足されたAyushma Bharat(国民健康保険)によりインド国内需要が急激に伸びると見込まれているからだ。2022年までに、現在の倍以上、740万人の専門職が必要になると見込まれており、AIの導入が必須なセクターだとしている。

 

ロンドンにはプライベート医療の病院と医療施設が集中するハーリー・ストリート(Harley St)という場所がある(北はRegent's Park近くのMarylebone Road、南はCavendish Square手前までの800m)。一回の診療費が平均300ポンドの高額施設が多い。あてがわれた15分を超えることもあるが、逆に5分で終わっても料金は変わらない。そのハーリー・ストリートでもインド出身医師の活躍が目立つ。イギリス下院図書館の報告書によると今年3月時点のインド国籍の医師は7,115人、外国籍では一番多い。インドで医師免許をとったのが12,610人で、その差はイギリス国籍を取得した人数と見るのが妥当であろう。インド出身の医師が帰国したり、渡英する医師が少なくなる場合、ただでさえ医師不足が深刻なイギリスの医療現場はどうなるのであろうか? 自国こそAI導入を急がねば。インドからの学生と専門職の受け入れ拡大に躍起になっているイギリス政府だが、残された時間は多くない。

 

 

 

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