印度維新

インドの政治・経済・時事を語る井戸端ブログ

太陽光発電セクターで”Make in India”に参入すべし

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インドは、化石燃料への依存から脱却すべく、再生可能エネルギーの開発に努めているが、政府は、中でも、太陽光発電に将来の可能性を見出そうとしている。ISA(International Solar Alliance:国際太陽光連盟)は2015年にモディ首相と当時の仏オランド大統領が始めたイニシアチブで、2017年に国際機関としての地位を取得した。本部はインド、ハリヤーナー州のグルグラムにあり、現在、75カ国がその定款を定めた枠組み協定に署名し、その内、日本を含む54カ国が批准している。昨年3月、第一回創設サミットがニューデリーで開催された。モディ首相は、このISAをパリ協定後の最も重要で有望な、気候変動と闘うための国際同盟として位置付けている。

 

インドは再生可能エネルギーと太陽熱発電では、ともに世界第5位(中日米独に次ぐ)だが、モディ政権は、太陽光発電を2020年までに175GW、2030年までに500GWとすることを目指している。最近のIRENA(International Renewable Energy Agency:国際再生可能エネルギー機関)報告によると、太陽光発電コストは下がり続けており、特にインドの発電コストが世界最低水準となっている。例えば、メガソーラーの設置コストで比べてみると、最高値のカナダの3分の1以下のコスト(793米ドル/kW)で設置できる。ちなみに、日本での設置コストはカナダを若干下回り(2101米ドル/kW)、中国はインドより上(879米ドル/kW)だ。

 

メガソーラーの設置には官民ともにかなり積極的に取り組んでいるが、設置コストの低下とともに、今後はビジネスや商業用、家庭用設備にも爆発的な需要が見込まれる。例えば、ケララ州コーチ国際空港では太陽光発電システムを備えているため、不安定な供給で悪名高い州の電力委員会に頼る必要はない。今後も成長が続く、この巨大市場に、日本企業の参入機会がある。低品質の中国製輸入パネルへの依存から脱却することを熱望するインド政府が、日本企業の直接投資を歓迎しない訳がない。例えば、パナソニック太陽電池はテスラ(Tesla)がソーラールーフタイルに使用している。ニューヨーク州バッファローのギガファクトリー2で製造している。インドでも製造できない訳はない。京セラ、カネカ、ソーラーフロンティア昭和シェル石油)などの太陽光発電システムはインドでも大いに歓迎されるだろう。

 

この巨大市場の恩恵を受けるためには、そしてモディ政権の支援を受けるためにはインドで製造しなければならない。中国に匹敵する市場を提供できるのはインドだけだ。しかも、中国は当該分野では外国企業を締め出している。逆に、インドは外国企業の直接投資を歓迎する。インド株市場のトレンドで言えば、クリーン・エネルギー分野への外国人投資マネーの流入は近年ほぼ倍増している。2016年に283百万ドル、2017年532百万ドル、2018年には10億ドルを超えた。政府の新予算案に盛り込まれた太陽光発電関連設備の設置に対する優遇税制はFDI(直接投資)を誘発するであろう。

 

当該セクターへの投資家はソフトバンクを始めとして、日本企業もちらほらいる。先月のプレスリリース「インドの有力財閥、マヒンドラグループと共同で分散型太陽光事業を推進」は三井物産からだ。海外勢では、ソブリンファンドのGIC(シンガポール)とADIA(Abu Dhabi Investment Authority)がGreenko Energy Holdingsへの追加投資(329百万ドル)を決定している。マレーシア政府傘下のTenaga Nasional Berhadもインドで再生可能エネルギーのプラットフォームを設立する方向だ。同じくPetronas(Petroliam Nasional Bhd)はルーフトップ太陽光パネルの製造で最大規模を誇るインド企業、Amplus Energy Solutions Pvt Ltdを買収した。シンガポール政府傘下のテマセク(Temasek)とスウェーデンプライベート・エクイティEQT Partnersは、インドのベンチャーキャピタリストらと共同で500百万ドルを調達し、インドでグリーン・エネルギーのプラットフォームを設立する方向だし、ExxonMobilもインド政府傘下のGAILと手を組んで同様のプラットフォームを設立する方向だ。国内では、インド最大規模のインフラ開発、アダニ(Adani)が今後5年間に42億ドルを費やし、グジャラート州カブダに世界最大の太陽光ハイブリット発電所を設立する計画だ。リチウムイオン電池の製造施設も併設し、2022年までに再生可能エネルギー発電量10GWを目指す。

 

しかし、インド政府が望むのは信頼できる外国製造企業による”Make in India”なのだ。信頼できない中国政府、中国企業からの輸入依存から脱却するために、信頼できる国、日本の優秀な企業にこそ応えてほしいのだ。

 

 

 

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