印度維新

インドの政治・経済・時事を語る井戸端ブログ

イギリス次期首相、秒読み段階のボリス・ジョンソン、英印関係を公約に

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「イギリスとインドの関係は通商関係を超えた深いものでなければならない。」とは、今週頭に報道されたボリス・ジョンソンの言葉だ。イギリスの前外相にして元ロンドン市長、そして、次期首相としては秒読み段階にあるジョンソンが公約したのは、インドとの「新しく、改善された」通商関係の構築だ。対立候補である現外相、ジェレミー・ハントがインド系保守党員に支援を求めると、遅ればせながらジョンソンも「モディ首相とは個人的な関係を築いている」とアピール(そんな関係、初耳なんですけど)、「首相になった暁にはインドと特別な関係を構築する」と。

 

彼は続けた、「EU28カ国が、十数年以上もの間、インドとの自由貿易協定の締結を最重要課題にしてこなかったのは滑稽ですらある」と。「この10月31日にEUを離脱しなければならない最も重要な理由は、貿易政策を自分たちの手に取り戻すことだ」、「インドは今世紀半ばには世界第3位となる経済大国であり、年間成長率はEUを大幅に上回る」、「早くEUを離脱し、早く貿易政策をこの手に取り戻し、早くインドとの貿易協定を結ぶことが、両国に雇用、成長、繁栄をもたらす」、「インドの”友人たち”との新しく、改善された関係の構築こそ、首相として自分が真っ先に取り掛かる仕事だ」と。なんかちょっとこそばゆくなってきたぞー。全然ピンときませんが、実利主義というか、風見鶏戦法というか、恥も外聞もなくクールなところが、イギリス人らしいと言えば、らしい。覚えてますか?「英国は永遠の友人も持たないし、永遠の敵も持たない。英国が持つのは永遠の国益だけである - 19世紀の宰相パーマストン卿」。さしずめ、「強いインドは英国の利益」にしよう、ということだろう。逆に、「強い英国はインドの利益」ではなかったワケなんだけどね。

 

実際、ジョンソンは既成事実を作ろうとしている節もある。「移民政策はオーストラリアのようにポイント制にすれば、インドの友人、家族、ビジネスパートナーたちが、イギリスに旅行したり、留学したり、仕事を探すときに不当な差別を受けることもない」と。インド人に対する移民政策の緩和で、イギリス国内のインド人コミュニティの更なる拡大を図り、インド企業がイギリス拠点を設置しやすくする環境を整備する目論見か。保守党内インド系党員の受けはよろしいようで、”Back Boris(ボリスを応援しよう)”キャンペーンを張る、あるインド系党員は「英印関係とインド系移民を理解し、支援するのはボリス・ジョンソンだけだ」とまで言い放つ。

 

昨夜はボリス・ジョンソンとジェレミー・ハントの公開討論会だった。ディベートでは、大方の予想通り、もはや失うものがないハントの攻勢を受け、守りのジョンソンが精彩を欠く状況ではあったが、時すでに遅し。ハントの巻き返しはないだろう。ジョンソン支持者の「イギリス南部の年寄り白人層」に今更アピールするのも、ハントらしくなくて哀しい。何よりもハントはビジュアルで負けている。ジョンソンがイケメンだということでは全くないが、ハントは線が細すぎるのだ。実物は写真より更にそうだ。いい人感オーラはあるのだが、世界のくせ者ツワモノたちと渡り合えるような気がしない。イギリスの首相としては貫禄がなさ過ぎるのだ(失礼)。その昔、トニー・ブレアを次期党首に押した労働党重鎮が、「彼の若さと経験のなさ」をメディアに問われた時、「見た目が良い。勝てる気がする」と言ったことを思い出す。ハントでは勝てる気がしない(スンマセン)。

 

イギリスの次期首相は7月23日に発表される。いずれにしろ、イギリスに渡りたいと希望するインド人たちはどっちに転んでも優遇されそうだ。そして、どっちに転んでも、イギリスはEUを離脱する。イギリス人はもともと自分たちが欧州の一部だという感覚が希薄だ。欧州移民が多いロンドンでさえ、EU旗を見つけるのは至難の業だ。欧州大陸を旅行すると結構な田舎町でも自国旗とEU旗が仲良く並んで掲揚されている光景を目にするのとは大違いだ。

 

 

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