印度維新

インドの政治・経済・時事を語る井戸端ブログ

イギリス:捨てる神あれば拾う神あり

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タタ・モーターズ傘下のジャガー・ランドローバー(JLR)は先週、バーミンガム近郊のカッスル・ブロムウィッチ(Castle Bromwich)にジャガーEV(電気自動車)の工場を設立すると発表した。2019年の"World Car of the Year"であるジャガーの高級SUV、I-PACEの設計・開発を担当したチームでXJのEVを生産するということだ。現地メディアによると投資額は約10億ポンド、2700人の雇用が確保される見通しとか。ブレグジットを控えるイギリスに朗報だ。

 

ジャガーCEOによると、EVの売り上げを伸ばすには「利便性とお手頃感」が必須で、バッテリーをイギリス国内で製造することで、価格を抑えることが可能だとしている。現地調達率を高めることで、サプライチェーンの整備、拡充にもつながるとしている。タタ・グループは、中国経済の弱体化などグローバル市場の逆風に立ち向かうため、官民協働でイギリス版ギガファクトリーを創設することをイギリス政府に呼びかけている。実現されれば、2020年に稼働開始となるハムズホール(Hams Hall)の新バッテリー工場と、ウルバーハンプトン(Wolverhampton)のエンジン工場とを合わせて、JLRには万全な体制となろう。タタ・グループにとっては大きな実証事業だ。現政権中にインドにEV工場を設立するとすれば、少なくとも数倍規模となるであろう。

 

ある欧州系シンクタンクの予測ではイギリスが合意なきEU離脱を強行した場合、自動車業界で失われる雇用は最悪6700件数、離脱前の雇用者数の十分の一だということだ。日本勢では日産がイギリスにおけるエクストレイル次期モデルの生産計画を撤回し、ホンダが2022年にスウィンドン工場を閉鎖すると発表している。カッスル・ブロムウィッチのJLR新工場で補える雇用はホンダ撤退で失われる数の半分くらいであろうか。

 

さて、ここからは余談だが、イギリスにインド人留学生が押し寄せている。イギリスの国家統計局が先月発表した内容によると、今年3月末までの1年間に、インド人留学生に発給された学生ビザ(Tier4)は21,165。前年同期比で40%増ということだ。3年間で倍増している。昨年度、イギリス政府がインド人学生に支給した奨学金は470万ポンド、加えて、大学支給分が1000万ポンドということだ。留学生の数では、中国人、アメリカ人、サウジアラビア人と肩を並べる勢いだということだが、イギリスのEU離脱後、その数はますます伸びそうだ。以前にも書いたが、イギリス政府がインド人に対する移民政策をさらに緩める方針だ。学生の場合は卒業後のイギリスでの就職も奨励する。実際、イギリスのビザおよび入国局によると、インド人への労働ビザ発給も急伸している。前年比10%増だということだが、その数はその他各国の総発給数を上回るとか。

 

確かに、教育はイギリスの強みかもしれない。シティで働く人々も独身ばかりじゃない。片親単身赴任、ワンオペ育児なんてとんでもないって価値観の人々だ。大方が英語を媒体とする教育を望み、数人の子どもを抱える家族持ちの大移動を受け入れられる器は、ロンドン以外に欧州にあるのか?結局、シティで働く人々も生身の人間だ。教育はもちろん、英語を媒体とする住環境、職場環境、外国人や異文化に対する寛容度が揃い踏み、尚且つあらゆる娯楽と文化的刺激を供給してくれる街がロンドン以外に欧州にあるのか?パリ、フランクフルト、ダブリン、アムステルダム、個人的にはどこもピンと来ないんですけど。シティ勤務でなくなって久しいが、ヨーロッパで外国人として暮らすなら、やはり断トツでロンドンだ。

 

 

 

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