印度維新

インドの政治・経済・時事を語る井戸端ブログ

インド、AIとIoTチップ設計のメッカへ

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時代は汎用CPU/GPUを使用したソフトウェアから、企業ニーズに合わせた高度に特殊化したチップの設計へと移行しているが、中でもIoT(Internet of Things:モノのインターネット)に実装するAIチップの開発競争が激化している。アップルのiPhone、グーグルのPixel、アマゾンのGraviton(クラウド専用の独自チップ)などがすぐに思いつくが、彼らだけでなく、フェイスブック、アリババ、サムソン、マイクロソフトと皆、特殊チップの設計にしのぎを削っている。Cadence Design Systems(米)という、半導体業界にソフトウエアツールを提供する世界有数の企業があるが、そこの社長によれば、AI機能のハードウェア化が急速に進んでいるということだ。その性能は従来のCPUやGPUを使用したソフトウェアベースのAIとは比べものにならないという。IoTを活用する自動車産業、航空産業、クラウド産業、携帯電話会社等、皆テイラーメイドの特殊チップの開発を進めている。この分野で先頭を走るのが米中で、日本、欧州、韓国が追随する。

 

さて、インドがどう絡んでくるかと言えば、その特殊チップ設計者の宝庫だということだ。米企業の需要に見合うだけの設計者の数は米国内に不足している。そこで彼らが目をつけたのがインドだ。グーグルは南インドベンガルールに特殊チップ設計を担当するチームを立ち上げている。クアルコムの開発センターは同じくベンガルールとハイデラバードにあり、カリフォルニアに次ぐ規模を誇っている。今年、インテルに買収されたIneda(ハイデラバード拠点のチップ設計企業)によると、インドはチップ設計のメッカとなりつつあるということだ。業界求人件数は約4万、現政権中にその数は倍増すると見られている。Analog Devices(米チップ設計企業)のCEOは現地の大学新卒の質の高さには毎年驚かされるとしている。

 

残念なのは、日本企業がまたしても出遅れていることだ。ソニーパナソニック、日立、ファナックデンソー富士通NEC、NTTといった名前がインドのこの分野で聞かれることはない。日本の設計者の数は国内で十分足りているということでしょうか?前述したように、アメリカでは設計者の数が不足している。中国とて自国の設計者を日本企業が雇用することを許すとは考え難い。ファーウェイやZTEに差し向けたいに決まっている。しかも、米中貿易戦争の最中にあり、各国の著作権を堂々と盗用する国でもある。韓国?諸々の事情にて論外。ま、設計者の数も少ないしね。欧州や東南アジアでも設計者の数は極めて限られている。そう、日本が頼れる、特殊チップを開発できる設計者が豊富に存在するのはインドだけだ。そして、この数年のインドからの、中央政府から地方政府に到るまで、産業ロビー団体外資誘致に当たる各機関からの熱視線は日本企業には届いていないのであろうか?これ以上明確な"Win-Win"の関係もないと思うのだが。日本企業の特殊チップ設計・開発の競争力を高めるだけでなく、日印ハイテク分野の協力が、アジアにおける日本の安全保障に欠かせない日印関係の強化にもつながる。日本企業の皆さま、(今以上に)アメリカに遅れをとるな、インドへ急げ!

 

 

 

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