印度維新

インドの政治・経済・時事を語る井戸端ブログ

日本の韓国向け輸出規制をインドメディアはどう報じたか

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想像に容易いと思うが、インドでは日本と韓国の長年の軋轢を知る人々は多くない。今回の日本の韓国向け輸出規制をインドの国内メディアがどう報道するのかが気になった。案の定、歴史的な背景を丁寧に綴るメディアはほとんどない。日本にとって、同じ歴史問題を抱える中国を抜いて、世界最大の人口となる国インドの世論を味方にしない手はないのだが、安倍さん、河野さん、インド世論対策はどうなってるんでしょうか?

 

短い記事はTHE HINDUから。「両国の軋轢の背景は今回の日本政府の声明には含まれなかった」と投げ打ち(それでも報道機関か)、「韓国最高裁第二次世界大戦中の強制労働に対する賠償金の支払いを日本企業に命じ、その支払いを拒否した企業の資産差押えを機に両国間の関係が悪化」と太字で結んでいる。あんまりだ。これでは無知な人々には日本側に非があると思われてしまう。

 

ずっとマシだったのが、NDTV。「徴用工問題に対する韓国政府の無作為に日本のフラストレーションが高まった結果だ」とし、日本の立場「この問題は1965年の日韓請求権協定により完全かつ最終的に解決している」と、日本が解決を求めて仲裁委員会の設置を要請したことも伝えている。加えて、経済産業省のコメント「両国間の信頼が損なわれ、適正な輸出管理ができなくなった」も載せている。

 

The Economic Timesは、「問題は1965年に解決済み」とする日本の立場や、経済産業省のコメント「信頼が著しく損なわれた」のくだりを載せる一方、日韓の歴史的問題にも少しだけ触れている。「両国の間には1910−45年の日本による韓国の"brutal(残忍な)"植民地統治の結果、長年軋轢がある」とあり、世界の”通説”または”固定観念”で論じている。しかし、韓国政府の徴用工和解案「日韓企業で慰謝料支給」を日本政府が断固拒否した理由としては、「1965年の無償・有償支援により、完全に解決している」からだとする日本側の主張を載せている。

 

India Todayには記事さえなく、The Indian EXPRESSはブルンバーグ の記事を載せたのみだ。このブルンバーグの記事が最悪。文責者の名前は出ていない。邦訳の方にはないが、英語の原文の方には補助として連名7名、そこに日系、韓国系と思しき名前が3名含まれる。”両国の歴史観について多数の著述がある”スタンフォード大学のダニエル・スナイダー氏の談話からは「経済戦争への道を歩み始めている。非常に危険だ」とする頓珍漢なコメントを載せている。そして、「アメリカの同盟国である両国の対立に対するトランプ政権の静観が日韓の論争を悪化させている」と。ふむふむ、それは確かにそうかもしれないが、「米国の安全保障上の利益」が「日本の尊厳と日本企業、および日本国民の利益を損なうもの」であってはならない、と日本国民としては断固として主張したい。

 

ブルンバーグの邦訳記事は抜粋であり、原文の英文記事の訳されていない部分では、過去の歴史問題に触れている。1965年協定の内容を明示しながらも、「それでは徴用工と慰安婦を癒すことはできなかった」と感情論に訴える。そして、実際の英文では、前者を"forced labor(強制労働者)"、後者を"women forced into sexual servitude(性的奴隷を強いられた女性たち)"と表現している。あたかもそれが異論のない真実であるかのように。この部分を邦訳しないブルンバーグは確信犯と言えよう。日本政府はこのような記述には丁寧に抗議し、まずは遺憾の意を表明すべきではないでしょうか(→安倍さん、河野さん!)。日本政府が黙っているから世界の「通説」になってしまうのだ。実際、全てのメディアで徴用工に関しては、詳細の説明なく、ただ"forced labor"と表現されている。それに対し、日本政府としては公式なコメントはないんですか?

 

昨今、日本の若者の留学熱はトンと冷え切っているようだが、英語で世界に向けて発信できる人材を育成することは急務だ。そう言えば、先々月に発表された内閣府の調査では調査対象国7カ国(日韓米英独仏スェーデン)の内、日本の留学希望者は最小の3割(唯一、「留学したいと思わない」が5割超)、最多が韓国の6割。英語での論争力で負けない若者層を育てねば。

 

 

 

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