印度維新

インドの政治・経済・時事を語る井戸端ブログ

証券アナリスト試験に殺到するインドの若者

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AIに職を奪われる職業にも上がっている証券アナリストだが、今ところ、その人気に陰りはないようだ。CFA(Chartered Financial Analyst)とは米国の証券アナリスト資格だが、今年の世界各地(90カ国95市場)の受験者総数は史上最高の約25万人(前年比11%増)。40%が女性だという。インドの受験者数も史上最高の2万5000人(前年比16%増)。テスト会場は10州33会場。日本証券アナリスト資格(CMA)と比べても圧倒的に難易度の高いCFAは、出題範囲が広く、山もかけられぬ。にも関わらず、その質問内容は深い、暗記じゃ乗り切れない。そして、スピードも要求される。レベル1−3は全て6時間がかりの試験だ。AIに奪われるかもしれない職だってのに不安はないのかしら。

 

インドの受験者数は本場アメリカの約2倍だが、人口比と金融資本市場の拡大余地、そしてインドの識字率がまだ74%程度に過ぎないことからして、今後もっと増えるだろう。特に、2027年には中国を抜き、世界最大の人口となる見通しのインドは、生産年齢(16〜64歳)人口の比率も高い(2018年の推計では65%)。生産年齢人口がすでにピークを迎えた中国に比べ、インドの同人口の伸び率が減速する気配はない。生産年齢人口が総人口に占める比率も今後ますます高まる見通しだ(推計では2040年頃まで上昇、68%に)。少子化問題を抱えている国と比べ、AI導入のインセンティブが低いというのもあるだろうが、導入したところで、AIが浸透する速さはどうだろう。ITインフラや国民平均のテクノロジーリテラシーもさることながら、単一民族国家、すなわち単一の民族、言語、価値観を持つ国と、多民族国家ではどちらが浸透するのが速いであろうか。

 

それに、そもそも証券アナリスト資格は証券アナリストになるためだけのものではない。AIに乗っ取られる職業かどうかは一概には言えない。例えば、優れたファンドマネジャーは、知識や過去の経験を鑑みながらも、想像力を働かせ、直観を信じる。相場に過去の相場と全く同じ相場は有り得ないからだ。パターン認識や記憶力は必要だが、それだけでは相場は乗り切れない。AIに直観が使えるようになるまでは安泰だ。さらに、人対人の繊細なコミュニケーション能力も求められる。一言でいえば、感受性だ。相手(顧客)の微妙な表情や言動に潜む感情を読み取る力、相手と共感する力だ。多民族、多言語、多様な価値感が共存する国では、それぞれのコミュニティーで共感できる人材も異なってくるに違いない。棲み分けも出来そうだ。

 

過去問はないが、誰でもCFAのウエブサイトでサンプル試験を受けることができる。ご興味のある方はお試しあれ。

interactive.cfainstitute.org

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