印度維新

インドの政治・経済・時事を語る井戸端ブログ

ラーフル・ガンディーを倒した女性閣僚、スムリティ・イラニってどんな人?

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元ミス・インディア候補(1998年)にして、国民的女優、第一次モディ政権では繊維相だったスムリティ・イラニは、第二次政権では女性・子供開発担当大臣を兼任する。

 

インドでは長らく、「インドでは誰も警察のことなんか信じない、誰も政治家のことなんか信じない。でも、"トゥルシー"のような連ドラのヒロインが言うことは信用する。」と言われていた。インドの連ドラの中には、国内外で4億人以上が視聴するものもある。アシッド・アタック(酸攻撃)や家庭内暴力、中絶問題など様々なタブーを取り上げ、視聴者を通して、社会全体の意識に変化をもたらす。スムリティ・イラニはその"トゥルシー"だった。Kyunki Saas Bhi Kabhi Bahu Thi(邦訳すれば、姑だって昔は嫁だったんだから)のヒロイン、嫁のトゥルシーを演じた。

 

連ドラのスターとなったイラニはそのままボリウッドに進むかと思いきや、政治家に転じた。2004年、デリーのチャンドニー・チョークから、コングレス党のカピル・シバル(元通信・情報技術相)の対立候補として出馬したのだ。敗れはしたが健闘した彼女は、その闘志をBJPに認められ、2011年には晴れてラージヤ・サバー(上院)議員となる。2014年の総選挙ではガンディー家のお膝元、アメーティーからラーフル・ガンディーの対立候補として出馬。選挙には敗れるも、第一次モディ政権で最年少、38歳にして閣僚ポスト(人材開発大臣)を与えられ、その後、繊維大臣となり、情報・放送大臣を兼務した時期もあった。そして、今回の総選挙では同じくアメーティーで、投票日にさえ選挙区民の前に顔を出さなかったラーフル・ガンディーを見事に倒した。劣勢を察したコングレス党がラーフル・ガンディーをケララ州ワヤナードにも同時擁立し、ガンディーは結局、このイスラム教徒が過半数を占める選挙区で当選したのだった。イラニはアメーティーでの勝利で、政治家としての地位を確立した。彼女自身はヒンドゥー教徒の家庭に生まれ育ったが、夫はゾロアスター教徒、一男二女の母親である。

 

さて、「今後5年間で女性の雇用を30%増やす」とはBJPの公約だが、民間シンクタンクによると、労働市場に参入している女性の比率は2005年以降、下降トレンドにある。インド経済の発展と女性の識字率向上が全く反映されておらず、事実として受け入れ難いほどだ。しかし、最近発表された統計省調査(2018年度)でも、都市部の女性失業率が10.8%と突出している。女性雇用問題がモディ政権内で優先順位が高い所以だ。女性・子供開発省だけでなく、労働・雇用省、人材開発省、零細・中小企業省などの関係省庁が目標達成のために連携する。女性雇用を目標以上に達成した企業への優遇税制やその他のインセンティブ、零細・中小企業省の入札での優遇措置、インフォーマル・セクター(貧困層の経済活動)の女性労働者のための保育園の設置などが具体策としてあげられている。すでに法制化されている産休制度やセクハラ防止法をいかにインフォーマル・セクターにまで浸透させるかが今後の課題なんだとか。安全で清潔なトイレや交通インフラもお願いしますよ!

 

 

 

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