印度維新

インドの政治・経済・時事を語る井戸端ブログ

第二次モディ政権の外交政策、日本に熱視線

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モディ首相とスブラマニヤム・ジャイシャンカル新外相ご夫妻(奥様は日本人)

モディはインドの国際プレゼンス向上のためには時間と労力を惜しまない。インド経済の発展、拡大とともに、外交政策も結果主義へと移行してきているが、モディ政権となってからは、モディ自身の人となりがインドの外交政策にも色濃く反映されるようになった。リスクを取ることと、敵対国の予想を裏切る行動をとることだ。今年2月、インドはカシミール地方で起こった警察部隊を狙った自爆テロへの報復として、パキスタンのテロ組織拠点を空爆した。インド空軍の空爆は実に1971年(第三次印パ戦争)以来のことだった。

 

第一次政権では外交政策に問題がなかったわけではない。モディは、党内ガバナンスにより指名せざるを得なかった前外相スシュマ・スワラージとはそもそもあまり折り合いが良くなかった。モディ色が外交政策に色濃く反映される中、彼女の外相としてのプロファイルは低いままだった。そんな両者の関係が時にインドの外交政策に影を落としたことは否めない。スワラージさん、国民の人気は高かったんだけどね。彼女のツイッターはさながら在外インド人の駈込みお悩み相談室だ(笑)

 

そんな話も今や過去のこと。健康問題もあって今回の選挙には出馬しなかったスワラージが去り、新外相にはスブラマニヤム・ジャイシャンカル(64)が任命された。ジャイシャンカル氏は1977年に外務省に入省、2015年から2018年までは外務次官だった。中国大使(09年〜13年)、米国大使(13年〜15年)を歴任し、インドがソ連と平和友好協力条約を締結した1979年から1981年までは審議官としてモスクワに滞在している。そこでロシア語を学んだ。1996年から2000年までは在日インド大使館の首席公使として東京に滞在した。日本人女性を妻に持つ二男一女の父親だ。

 

第二次モディ政権の外交政策の強みはこの新外相だ。外務次官時代にモディとは蜜月の関係を築き上げ、モディはジャイシャンカルを心底信頼している。選挙の過程を経ることを強いず内閣の重要ポストに任命したんだから、信頼しているに決まっている。彼が閣僚であり続けるために、今後半年以内に政府は、引退する上院(Rajya Sabha:ラージ・ヤサバー)議員の後任に彼を推薦し選ぶことになろう。モディ– ジャイシャンカルは最強のチームとなるに違いない。つい最近、Youtubeでジャイシャンカルを含むパネルディスカッション(ORF:Observer Research Foundation大手民間シンクタンク主催)を見たが、その洞察力たるや、頼もしいばかり。

 

以下はジャイシャンカルの発言。

「激動する国際環境に対応すべく、インドも固定観念に囚われず、結果重視の外交政策を推進するべきだ。変化を恐れては行けない」と。ふむふむ。そこで彼は、今後インドが目指す、対主要各国・地域との関係を簡単な言葉で表現していた。勝手に、私なりに、解釈してみました。

 

・対米 "Cultivate"  

   友好関係を手塩にかけて発展させるってニュアンス

(本音:10年後には我々のこと必要になると思うよ)

 

・対露   "Steadying"

   これまでの友好関係の安定化

(これまで通りで!パキスタンよりにならないでね)

 

・対中 "Managing"

   緊張関係の管理

 脅威を瀬戸際で食い止めるってニュアンス

(INC時代のような受け身には戻らないからね。

 今後も言うべきは言い、やるべきはやらせてもらう)

 

・対日 "Enthusing"

   日本に熱視線。または日本のインド熱を冷まさせない。

(互いの国家安全保障のため、もっともっと仲良くしよう)

 

・対欧 "Attending"

   独仏(イギリス含まず)に丁寧に対応

(特に軍事協力を結ぶフランス重視)  

         

私にとって嬉しいのは日印関係が第二次モディ政権の外交政策の中核を占めそうだってこと。なんてったって"Enthusing Japan" ですから。「日本を熱狂させる」ってことですから。知り合いのインド人に言わせれば、ターミネーター2で、怖がるリンダ・ハミルトンに声をかけるアーノルド・シュワルツェネッガーの気分なんだとか。"Come with me if you want to live." 「生き延びたいなら、ついて来い」、ちょっとシャクに触るけど、10年未満に名目GDPでも抜かれそうだし、ま仕方ないか。インドにゆかりのある私としてはリンダ・ハミルトンでいい!と思ってしまうのだ。今後数年間で日印関係は大きく前進することだろう。

 

 

 

 

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